僕の親孝行

梅雨も明け、諏訪地方も夏本番を迎える。

そんな雲だった。

今、僕らは霧ケ峰高原に来ている。

手に届きそうなほど、空が近い。

高原のバナナ?

いや違う。これは花のつぼみだ。

そう、ニッコウキスゲ。

一般的にはゼンテイカ(禅庭花)と呼ばれるユリ科の多年草。

栃木県の日光地方のものが有名でその名が付いた。

今週末、泊まりに来た僕の母は、「きれいね。」

と何度も言った。

 

「いい親孝行ができたなぁ。」

我ながら感心していた。

 

でも実は、

「ニッコウキスゲを見に母を連れて行こう!」

と言い出したのは、僕ではなく、マダム明子だった。

 

「明子が親孝行してくれた。」

これが正しい言い方。

 

「たまには実家でも帰るか。」

僕は、ふとつぶやいた。