深い霧がたちこめる。
昼間だというのにどんより暗い。
ここは富士山3合目。
起伏の激しい山道が僕らの体力を奪う。
3時間近く、それでも歩いた。
もう休もう。
誰もがこの言葉を待っていた。
おにぎりや弁当を各自、持参してひと休み。
僕は何も持ってこなかった。
そんな僕をみかねて、みんなお菓子やナッツをくれた。
本当に優しい仲間。
僕は、みんなより先に山を下りて河口湖のフレンチ、ミウラ料理店に向かった。
ここの三浦夫婦とは以前から仲良くさせてもらっている。
前菜からデザートまで食べ尽くした。
おなかいっぱい。
満たされた。
つまり、、、
僕が山に何も持っていかなかったのは、ここでご飯を食べる計画を密かにたくらんでいたから。
でも、そんな事、みんなに言えなかった。
ひとり、ぬけがけするみたいで言えなかった。
みんなが優しいから言えなかった。