山の贈り物

諦めかけていたその時、一筋の光りが差した。

去年も行ったあの場所にムキタケはあった。

確かに存在した。

僕らは息を飲んだ。

ゆっくり深呼吸して、ありがとうと言って手を合わせた。

そして採る喜びを噛みしめながら丁寧にひとつずつビクに入れた。

大げさに聞こえるかもしれないが、それ程今年は採れなかったということなんだ。

このまま不完全燃焼で終わるんだろうなと思っていただけに喜びもひとしお。

「最後は採って終わりたい」

誰もがそう思う。

僕らはこれを今年最後とし、幕を閉じる。

「有終の美」と呼ぶにふさわしい。

帰り道、山は紅葉していた。

僕らは高揚していた。