僕は、猟師の上條さんから仔鹿と仔猪を手に入れた。
内臓を出して、小屋に吊るして1週間経ったところ。
ちょうど肉がおちつき、うまみがのってくる。
どちらも小さいので、肉質が柔らかく、特有の臭みも殆どない。
「子供を撃つなんて、かわいそう。」
そう思う人がいるかもしれない。
でも僕はこう思う。
品種改良を何度もされて、狭い身動きの取れない所に押し込まれ、
生まれた時から人間のために死んでいく一般的な豚や牛の方が
はるかに不自然で、残酷だと思う。
でも猟師たちは、自分たちが捕ってきた獲物に敬意を払い、感謝し、
酒で清め、手を合わせて祈る。
そして、余すとこなく食す。
この方が、自然だ。
太古の昔から人はそうしてきた。
いつの間にか人間は、とても身勝手で残酷な生き物になってしまった。
僕ができる事。
それは、野生の猪も、飼ってる豚も命は一緒。
その命の重みを感じながら包丁を握り、素材と向き合うということ。
そして、余すとこなく使い切るということ。
それが、殺生への敬意だと思う。