大きな誤り

清水牧場にやっと着いた。

ここの暮らしはいつ来ても変わらない。

激動するこの世の中で、ここだけはゆっくりとした時間が流れている。

世間に左右されることなく清水夫婦は生きている。

あぁ、なんて究極な生き方なんだろう。

僕には出来ないが羨ましい生き方だ。

と思いきや、、、

清水さんの口から思いもよらぬ言葉がとめどなく溢れ出た。

震災、原発の政府の対応、憤り。韓国全土に広がる口蹄疫の問題。

中国の脅威。これからの自衛隊の在り方。海外メディアの視点。などなど

世界情勢まで話しが発展していった。

 

この山の中で、ただひたむきにチーズ作りだけに専念して生きていると思っていた。

僕の大きな勘違いだった。

そうだ、こういうことだ。

第一次産業(生産者)の人が一番ちょくに国の政策に翻弄されるんだ。

それで廃業に追い込まれたり、自らの土地を手放したり、

生き方そのものを変えないといけなくなる。

国の考え方、世界の流れ、世の中の動きによって、大きく左右される職業なんだ。

今更ながらに気がついた。

生産者の人こそ、国の政策や世界情勢に敏感なのかもしれない。

僕はここまで来て良かった。

いろんな話ができたし、何にせよ清水さんの笑顔が見れたのだから、、、(えっ、親子?)

 

 

                                        おわり

 

伝統食

奈川村にある一軒の蕎麦屋に立ち寄った。

このあたりの郷土食、とうじそばである。

一箸分のそばを「とうじ籠」(写真)に入れてしゃぶしゃぶのように頂く。

 そばを投げ入る様から「投汁そば」とも言う。

かつては冠婚葬祭のごちそうとして振る舞われた。

お米も採れず、寒さ厳しいこの地域が生み出した誇り高きそばである。

充分味わって食べよう。

腹ごしらえも済ませ今日の大本命、清水牧場に向かう。

一年半ぶりの再会。

早く、清水さんの笑顔を見に行こう。

                             つづく

両立

すいかの産地で有名な松本市波田町。

ここで完全無農薬で野菜を作っている人がいる。

降幡さんだ。

僕は無農薬を疑っていた。

不可能だと思っていた。

おいしくて、見た目がきれいで、生産性も上げて、なおかつ

市場に出す商品にするには、化学肥料やある程度の農薬はやむ終えないと思っていた。

でも降幡さんは可能だと言い切った。

確かに、降幡さんの畑をみれば分かる。

雑草が生えないようにマルチで覆い、虫が野菜に付かないように

手作りの「虫ホイホイ」(写真上)を作ったり、ほかにもたくさん

知恵と工夫に溢れていた。

 生産性と完全無農薬。

この対極にある2つの両立をめざす。

僕は思う。

志の高い人の目はいつも輝いている。

 

間違いなく降幡さんはその一人だ。