命をいただく

僕は、猟師の上條さんから仔鹿と仔猪を手に入れた。

内臓を出して、小屋に吊るして1週間経ったところ。

ちょうど肉がおちつき、うまみがのってくる。

どちらも小さいので、肉質が柔らかく、特有の臭みも殆どない。

「子供を撃つなんて、かわいそう。」

そう思う人がいるかもしれない。

でも僕はこう思う。

品種改良を何度もされて、狭い身動きの取れない所に押し込まれ、

生まれた時から人間のために死んでいく一般的な豚や牛の方が

はるかに不自然で、残酷だと思う。

でも猟師たちは、自分たちが捕ってきた獲物に敬意を払い、感謝し、

酒で清め、手を合わせて祈る。

そして、余すとこなく食す。

この方が、自然だ。

太古の昔から人はそうしてきた。

いつの間にか人間は、とても身勝手で残酷な生き物になってしまった。

 

僕ができる事。

それは、野生の猪も、飼ってる豚も命は一緒。

その命の重みを感じながら包丁を握り、素材と向き合うということ。

そして、余すとこなく使い切るということ。

 

それが、殺生への敬意だと思う。

 

最後のトマト

小淵沢の道の駅。3年前、ここで僕は、うまいトマトに出会った。

油井さんのトマトだ。

そして、今年初めてお会いした。(やっと身元が判明。笑)

この人が、あのトマトを作っていたんだ。

トマトの感じから、だいたいイメージしていたとおりの人だった。

まっすぐで、素直で、おだやかな人だった。

写真からも見てうかがえる。

この先は、さすがに赤くならないと言っていた。

今年最後の油井さんのトマトを手に、僕は高根町を後にした。

 

また来年、お逢いする日を楽しみにしている。

 

 

肉のまる公 後編

年に2度開かれる、長野県の牛の競りに参加した。

もちろん、関係者以外入ることが出来ないが、

まる公さんが、僕らを誘ってくれた。

レーンに吊り下がった牛は3mをゆうに超す。

牛は近くで見ると本当にでかい。(重さは約600k)

豚が子犬に見える。(ちなみに豚は80kくらい)

 

今日は100頭以上の牛がずらりと並ぶ。

こんなこと普段まずない。

いわば、牛祭り。みんなこの日を待ちわびていた。

1頭、数百万する高価な買い物だ。

間違いは許されない。

自分の知識と経験がものをいう。

これが、いわゆる目利きってやつだ。

その目が確かな業者(お肉屋さん)とのつながりが

僕にはどうしても必要だった。

 

今日、改めて、まる公さんで良かったと思った。

二人の知識、経験、情熱は、僕にとって本当に心強い。

まっとうな業者がレストランを育て、また

まっとうなレストランが業者を育てる。

 

僕はそうやって進化していく。

                            おわり