料理人の使命

ただおいしい料理を作るのは意味がない。

それは僕の仕事ではない。

今まで生きていた豚が冷たい豚肉になるまでの過程を知って焼くのと

そんなこと考えないで焼くのとでは、えらい違いだ。

味に差がでなくても、その店の差となってきっと出てくる。

うまく言えないけど、それが「その店の哲学」だと思う。

その料理人の哲学だと思う。

僕はここまで知っていないと豚を焼く資格がないと思っている。

自分で豚を育ててるわけじゃないから、、、

せめて知っておくこと、作り手(生産者)の人と話しをすることがとても重要だと思っている。

だから僕は毎年ここに来る。

「今年もよろしくお願いします」という気持ちを込めて、、、

 

僕の料理がお客さんにおいしいと言ってもらえるのはこの人たちがいるから、、、

そう思っていつも肉を焼いている。

 

それが僕の哲学なんだと思う。

 

                                    おわり

 

 

人間の使命

僕は毎年この時期になると、豚の様子を見に小谷村を訪れる。

今回は生産者の一人、松井さんに逢うことができた。

冬に2mも積もる雪も今はすっかり消え、豚が放牧できる季節となった。

バラバラにいた豚たちも松井さんが来ると、

「遊んでくれ!」と言わんばかりに寄ってくる。

警戒心が全くなく、とても、人なつっこい。

 

小谷放牧豚の一生。

まず、3月頃に生まれた赤ちゃん豚を2ヶ月間、専用の豚舎で体重が30kgになるまで育てる。

その後、トラックで運ばれて、放し飼いをする。沢の水、澄んだ空気、山の傾斜でストレスのない

環境で遊ばせる。

豚は一日、約3kの餌を食べる。体重が一日約700g増える。

4ヶ月間放牧すると、だいたい体重が110k位になる。

9月の終わり頃、ここにいる豚たちはトラックで運ばれて屠畜場へと向かい一生を終える。

そして僕ら人間がその肉をいただく。

だから、、、

ハンバーグでも、餃子でも、しょうが焼きでも、ソーセージでも、カツ丼でも、肉じゃがでも、

どんな料理でも残さずに食べてほしい。

大切に味わって食べてほしい。

家庭でも、ファミレスでも、ラーメン屋でも、もちろんDANLOでも。

 

それが命をいただいている僕ら人間の使命だから、、、

 

                                      つづく

 

 

 

あの時の、、、自分

大町サッカー場に着いた。

綺麗に手入れされた芝は選手のモチベーションを上げる。

僕は足が動かなくなるまで走ろうと決めた。

キックオフの笛が鳴った。

な、なんだ! この感じは、、、 金縛りのような、、、

鉛のように重い体がいうことを聞かない。

足はもつれ、一人で転ぶ。

観客の笑い声が聞こえる。

15分も経った頃、交替を余儀なくされた。

「悔しい」と「当然だな」と思う気持ちが同時に沸いた。

 

チームを引っ張るどころか皆の足を引っ張っていた。

あぁ、20年前にもどりたい。

こんなんじゃないんだ、僕の実力は。

いや、これが現実なんだ。

まぎれもない事実なんだ。

 

あの時の僕はもうここにはいないんだ。