坪田さんは塩尻の洗馬でワインを作っている。
とても物静かで穏やかな人。ゆっくりと語りかけるように話をしてくれる。
内に秘めたワインへの並々ならぬ情熱はその容姿からは想像しがたいものだった。
坪田さんは、静と動、理論と感性、緻密さと大胆さ。そんな相対するものを兼ね揃えている人だ。
なんて魅力的な人なんだ。
そして、その魅力はしっかりワインにも反映されている。
力強くて繊細な感じがワインを口にするとわかる。
飲んだワインの印象と実際その作り手にお会いするとだいたい同じ味だ。
その人の個性がはっきり出ている。
心が豊かな人が作れば豊かな味になる。
坪田さんのワインはそんなワインだ。
ふと、僕の料理はみんなにどう映っているだろう。
ただおいしいだけじゃなくて、みんなの心が豊かになる感じ。幸せな気分になる感じ。
そんな 料理が作れたらなぁ。なんて思う。
そのためには僕の心が豊かでないと。
自分の心が豊かになるには、心の豊かな人に出会うことだ。
その人からいろんな話を聞いて感じることだ。
そこから見えてくるものが必ずある。
それが僕の心と体を動かす力になる。
僕の生きる力になる。